陰気な容姿のせいで霊感があると恐れられ、“貞子”というあだ名までつけられている黒沼爽子。しかし、本当の
爽子は明るく、些細なことにもすぐ感動する性格の少女だった。ピュアな爽子が友情や恋、ライバルや友達の失恋などいろんな「初めて」を知っていく過程を、
丁寧に描いていく学園青春ストーリー。
しってる? 友達ってね 気付いたらもうなってんの!
このマンガがすごい!(宝島社)の2008年度版オンナ編の第1位の作品。
正直まだ連載中なので感想は変わるかもしれないが、今の段階ではまぁまぁ読めるかなという感じです。最初読んだときは漫画喫茶でOLのようにオロオロ号泣
して一気にハマッタ作品なのですが、巻が進むにつれて「あれ?こんなもんなのか?」と思うようになってしまった。その由縁は登場人物がまるで「聖人」のよ
うな振る舞いのせいである。少女漫画の根本にあるのは葛藤や悩み、それに対する強いメッセージ性が必要なのである。この作品においてはそれが一切存在しな
い、あるのは善意だけで悪意なんて感じられない。善人が善人を好きになる淡々とした物語なのは事実である。さらに風早君が純粋過ぎるのも問題点の一つであ
る、もう少しダークな部分を描いてほしい所。酷評ばかりでどうしてオススメなのかは主人公のキャラクターそのものである。今までの主人公では考えられない
設定に加えて、まるで読者が応援したくなるような性格。今後の展開次第では大好きな作品になるかもしれないので書かせて貰いました。
風早は物語において不要なキャラクター
こんな純粋無垢な高校生男子など存在しないっ!
冒頭の感想部分でも触れているが、風早があまりにも現実離れし過ぎている。漫画だから仕方が無いとか、漫画だから王子様キャラじゃないと・・・。という意
見もあるだろうが、私的にはこういう学園物のジャンルにおいてはリアリティーを追及して欲しい。思春期真っ只中の男子高校生があそこまでピュアで純粋なの
はどうか、聖人じゃないんだからもう少し捻くれた点も描いて欲しい。風早の「浮いた子をほっとけない」という設定は完全に蛇足、そんな設定があるから爽や
かキャラクターを作らなければいけなくなるのだ。
読み手が男性の場合、女性の心理描写が複雑な場合は「まぁそんなもんか」と軽い気持ちで流すことが出来るが、男性でしかも男子高校生の心理描写は正直すぐ
に分かってしまう。読んでいて「こんな人間いるかよ」ってすぐに思ってしまう、風早がまさにそれだった、漫画だからと云って「やりすぎ」だけはしてはいけ
ない。
脇役が素晴らしい
恋愛よりもいい友達を見つけることが高校において大事だと私は思う。この3人は恐らく一生のダチ。
爽子を後押しする友人の何気ない言葉や仕草があまりにも巧いなぁと思いました。爽子に巧妙なイタズラを仕掛ける女性ですら、爽子に「恋愛」とは何かを導く
大事なキーマンにもなっていく。女子高生漫画の定番のポイントもこの作品ではしっかりと昇華していた。
黒沼爽子
真っ黒な長髪と青白い肌という陰気な容姿から「貞子」というあだ名が定着しており、「貞子」という名の持つ呪わしい印象と先入観だけで周囲に畏怖されてい
た。そのため、多くの同級生が「爽子」ではなく「貞子」が本名だと思い込んでいる。霊を呼び寄せる、3秒以上目が合うと不幸が訪れるなどの噂が囁かれてい
るが、当の本人は霊感が無く見たことも感じたこともない。純粋かつ前向きな性格であり、容姿とは裏腹に、常に人と明るく接する努力をしている。一人で居る
ことに慣れているため自分や他人の感情に鈍いところがあり、些細なことでも感動し人に感謝する。成績は非常に優秀で、人の役に立てることを喜び、クラス委
員の雑用も率先して務めている。掃除、ゴミ拾いを日課とし、暇な時には勉強をしている。
爽子の秀逸なキャラクター設定のおかげで作品の目を瞑りたくなるような出来事も「爽子がいるからいいか」って思ってしまう程、素晴らしいメインヒロインだ
と思う。爽子の成長と共に恋愛模様が変わっているのがこの作品の根本的な部分なのだが、出来事の一つ一つに爽子の心の変化が描かれている点が高評価。人と
接する事を知らない爽子が恋愛の螺旋に飛び込む姿がなんとも初々しく観ているこっちが恥ずかしくなってしまう。だがそれがいい、そこを曲げてしまうほど見
る価値など無くなってしまうだろう。
爽子は待つ女性ではない、寧ろ自分から攻める強さを持っている。きちんと自分の足で一歩一歩しっかりと未来へ歩んでいる。自分の思いをハッキリと人に伝え
る事が出来る、これは単純な事かもしれないが実は難しい事なのである。数人の女子からトイレで脅迫された時や、恋のライバルとのいざこざにしろ普通なら爽
子の様な性格だと萎縮して本心を言えない事が多いイメージが有るけど、爽子に関しては不器用なりにも自分の正直な気持ちを口に出せる所が意外性がある。恐
らくだが爽子が自分の正直な気持ちを話せるのは誤解される辛さを誰よりも知ってるからで、だからこそ他人に誤解されない為には誠意をもって伝える事が一番
大切だと分かってるからだと思う。また爽子の誠意が伝わればこそ相手も爽子の気持ちに応えてくれる物だと思っている。そういう強い女性だからこそ、私自身
この作品に惹かれる理由になったのかもしれない。