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ジョジョの奇妙な冒険

■ジョジョの奇妙な冒険
邪悪な吸血鬼と化した人間達やその後継者たちが繰り広げる戦いを描く。戦いの系譜は2世紀以上に渡り、主人公 はいずれも「ジョジョ」という愛称を持つ。ただし劇中でジョジョの愛称がよく用いられていたのはPart3初期までである。第1部、および第 2部は、波紋と呼ばれる特殊能力を身につけた人間たちが吸血鬼や「柱の男」という人間よりもはるかに長命で強力な生物に立ち向かうという作品で、ロマンホ ラ- 深紅の秘伝説」というキャッチコピーが付けられていた。第3部以降は、スタンドと呼ばれる精神エネルギーを具現化した幽体を使う人間同士の戦いとなり、様 々な能力があるスタンドの攻防が毎回の骨子である。最後の敵は時間に関する能力を持つ傾向があり、主人公もまた時間に関わる能力を持つ場合がある。「ボス が時間を操ることが多いのは?」という疑問に対して作者は「時間を支配できる奴がいたら無敵だろうな、どうやって主人公は勝つだろう、と思う」と答えてい る。
俺が最期に見せるのは代々受け継いだ未来に託すツェペリ魂
2006年の文化庁による文化庁メディア芸術祭10周年 記念企画、日本のメディア芸術100選にてマンガ部門2位
■どんな苦難に遭遇しても信念を失わず力強く前進していく登場人物の生き方がジョジョの魅力
「作品全体のテーマは「人間讃歌」。登場人物は敵も味方も全員が「前向き」である。生きる事に疑問を持つ人間はたぶんひとりも出て来てないはずである。主 人公たちはそういうヤツらを相手に乗り越えて行かねばならない。そして読者のみなさんも。絶対に必要なものは"勇気"だ。(文庫版第1巻のあとがき)

荒木先生曰く「敵も味方も全員が前向きで、生きる事に疑問を持 つ人間は出て来てない」。その輝かしい未来へと一歩一歩前進せんとする膨大なエネルギーに触れると、キャラが放つ生命の輝きに触れてドンドンと作品に惹き 込まれていってしまう。自身を全肯定することのカッコ良さにシビれ、読み手の心の中に自分を信じる勇気が湧き水のように生まれてくるそんな素晴らしい漫 画。頭脳バトルという新しいジャンルを生み出した稀代の漫画家でもある、以前のバトル漫画の常識は「腕力」「必殺技」が強い者が云わば作品の強者だった。 ジョジョにおいてのスタンドバトルには云わば「強い」「弱い」の定義は一切存在しない。スタンドでの闘いの基本となるのは知恵比べである、例えば相手を老 化させる能力の場合、どうやって相手を老化させる?いま老化させてしまうと自分が不利ではないか?と常に相手の心理の風下に立たなければならない。従来の 漫画だと強い敵を倒すとまた新しい敵が出てくるのが通説だったが、ジョジョにおいては相手を追い詰めても次のページでは立場が逆転していたなんて事は日常 茶飯事である。常に緊張感やスリルを読者が味わえるのだ。またジョジョの敵キャラのほとんどが「こいつどうやって倒すんだ?勝てないだろ」と思ってしまう 程の強いキャラクターがドンドン登場する。だがどんな能力にも弱点があって、その弱点の見せ方や見つけ方が実に巧みである。
■ジョジョの奇妙な冒険 第1部 / ファントムブラッド
人間讃歌は勇気の讃歌!人間の素晴らしさは勇気の素晴らしさ!いくら強くてもこいつらゾンビは勇気を知らん!
真面目で正義感溢れる好青年の主人公のジョナサン、ジョジョシリーズ最大の宿敵ディオ、ディオにファーストキスを奪われても泥水で唇を拭い強さを見せ、後 にジョナサンと結婚するエリナや波紋法をジョナサンに教えたツェペリ男爵やジョナサンの仲間になるスピードワゴン等、個性的な登場人物が登場します。 (ジョジョに出てくる登場人物は全員個性的なんですが)ジョジョシリーズの原点です、燦燦と光り輝く宝石のような漫画。若干20代の若造がまさかジョジョ の構想をすでに3部まで考えていた点、物語がしっかり組み込まれていて歴史的な確固たる描写があり、禁断の石仮面のリスクと強さ等、新人とはとうてい思え ないセンスの良さ。誰かの言葉を借りると、「すでに彼は完成しているよ。」まさにその通り、ミロのビーナスなんか甘っちょろい、本当に美しい漫画。またセ リフのセンスが抜群に良く、作者の荒木飛呂彦氏の才能が抜群に発揮している。特に禁断の石仮面を手に入れてしまったディオがジョナサンに言った「俺は、人 間を辞めるぞー。ジョジョー。俺は人間を超越する」。こんな独特なセリフこそが荒木節。キスする時は普通「チュー」が一般的だが、荒木は違う、「ズギュー ン」なのだ。キスの効果音がまるで重みのある銃声なのだ。カエルを拳で潰す効果音も「メメタァ」。ここまでくると分からない。凡人には決して理解できな い、到達する事が出来ない領域の漫画家、それが荒木先生なんだと思う。また最終話でジャンプではありえない禁忌、主人公を殺すという荒業を使う所も「貴 様!新人ではないな!」と言ってしまいそうなくらい度胸が据わってる。

ファントムブラッドは映画になったりゲームになったりと色々とリメイクしている部なのですが、自分は映画の方を興味本位で観たのですがやはりジョジョファ ンにとっては厳しい映画でした。言うなれば「大事な一人娘を誘拐された気分」そのような感じです。大事なシーンがなかったり、そもそもこの壮大な物語を1 時間30分で納めるのは無理があったという事です。そもそもお笑いコンビのスピードワゴンの起用は果たして良かったのだろうか、小沢さんは大のジョジョ ファンでも有名だしコンビ名もジョジョから貰っているくらい好きなのはわかるが、云わば声優の素人に大事なキャラクターの声優を任せてもいいのか?ちょっ と考えさせられました。ディオとの最終決戦のシーンは剣を伝って流す波紋がなかったり、薔薇を使った波紋がなかったとか色々文句を付けたいですが、「震え るぞハート!燃えつきるほどヒート!」等の名台詞はちゃんと披露してくれたのは正直嬉しかったので良かったという事にします。
■ジョジョの奇妙な冒険 第2部 / 戦闘潮流
俺はお前に出逢う為に1万数千年もさまよってたのかもしれぬ
すでに書きましたが、やはり凡人では到底理解できない領域になってくる。作者の頭の回転が良すぎるのだ、これこそが頭脳戦というヤツだと思うが、あまりに も裏を書きすぎて読者を放置している感が否めない。主人公も1部とは打って変わり、言うなればちゃらんぽらんな主人公。だがやる時には必ずやる男で、やは りジョースター家の血統はこうでなくちゃと読んでいて思った。ジョジョの主人公は血の繋がりがちゃんとある訳だが、全員性格はやっぱり違う、だけど胸に秘 めている決意みたいな物は全員ちゃんとある所がやっぱり凄い。2部の主人公ジョナサンは物語の云わばヒーローなのだが、普通に逃げる。2対1でも勝てない 敵がいると、1人で平気な顔して敵前逃亡する無様なヒーロー、だが実は違う、逃げる間に色々な策を考える。それに敵が追ってくるって事は味方から敵を遠ざ けるという事で、結果「倒せなくても」味方を「助けれる」という考え方の持ち主。本当にかっこいい、自分を犠牲にしてまでも仲間を助ける、しかも無意識 に、本能がそうさせている(ナレーションの言葉)だが、絶体絶命の危機にも関わらずいつものちゃらんぽらんな態度で相手を手玉に取り、誰も思いつかないよ うな逆転劇をかましてくれるジョセフ。逆転パターンでありがちなのは、突然主人公が強くなったり、味方の誰かが助けに来たり、実はまだ自分の本当の力を出 していなくて今から最強の技を出してやろう・・・。といった展開がありがちなのだが、ジョジョにおいてそのようなパターンは存在しない。自分の力を最大限 まで利用する、詳しく書けば周りの環境に合わせて戦ったり、自分の力を引き出してくれる道具を使ったりと、読者が読んでいて「こんな使い方があったの か!」とまるでサスペンスのトリックの謎解きみたいに、あっと思わせてくれる。シーザーを敵でありながらも戦いの中で戦士と見極め、最後のシャボンを割ら ずに颯爽と立ち去ったワムウはジョジョ至上究極にかっこいい敵キャラクターだと僕は思いました。

しかし、ジョジョを読むと「運命」と言うものを強く感じる。ツェッペリ家はジョースター家を支える存在とか1部で助けられた子供であるリサリサの存在、そ してスピードワゴン。その存在全てが、ジョジョを支えているのです。本当にジョセフ・ジョースターは作者に愛されたのか2部、3部、4部と長きに渡り出て きますので、ジョセフ好きは多いはず。勿論自分もジョセフ好きです。
■ジョジョの奇妙な冒険 第3部 / スターダストクルセイダース
腹の底から“ザマミロ&スカッとサワヤカ”の笑いが出てしょうがねーぜッ!
手から炎出したり、口から吹雪を出したり、手がゴムのように伸びたりする超能力漫画っていうのはまるでバトル漫画の常識となっている。その土台を作ったの は荒木先生で、超能力の元がジョジョにおける「スタンド」である。多種多様な戦闘描写、能力者同士の絶妙な駆け引きも素晴らしいながら、バトル漫画であり がちな肉弾戦オンリーに決してならない点がやはり素晴らしい。スタンドバトルこそがバトル漫画の頂点に堂々と君臨している画期的なシステム。誰も破る事は 出来ないし、あの世界観に入門する事は決して出来ない。常に相手の心理の風下に立ち、相手の行動の先手を取ろうとする。相手の状況を素早く察知し、次の自 分の行動で確実に相手を殺す所まで考えている、だが相手も同じ事を考えていた!といった、戦闘開始でお互いに技を見せ付けるのではなく、まずは相手の行動 パターンを分析するのがジョジョの特徴。この戦闘スタイルは読んでいて本当に目から鱗、荒木先生しか書けないバトルの表現だと思いました。主人公達の目的 も終始、揺らぐことはなく1歩1歩確実にゴールに進んでいる辺りも素晴らしいと思った。

因縁のライバル対決、ジョースター家vsディオの戦いの最終決戦のシーンでのDIOの言葉が今でも脳裏に焼きついている。「人間は誰でも不安や恐怖を克服 して安心を得るために生きる。名声を手に入れたり、人を支配したり、金もうけをするのも安心するためだ。結婚したり、友人をつくったりするのも安心するた めだ。人の役立つだとか、愛と平和のためにだとか、すべて自分を安心させるためだ、安心をもとめる事こそ、人間の目的だ。そこでだ……わたしに仕えること に、なんの不安感があるのだ?わたしに仕えるだけで、他の全ての安心が簡単に手に入るぞ。今のおまえのように、死を覚悟してまでわたしに挑戦することのほ うが、不安ではないかね?おまえはすぐれたスタンド使いだ…殺すのはおしい。ジョースターたちの仲間をやめて、わたしに永遠に仕えないか?永遠の安心感を 与えてやろう。」このセリフはDIO様だから言える素晴らしいセリフ。ラスト、「無駄無駄無駄・・・。」と「オラオラオラ・・・。」のラッシュは読んでい て鳥肌が止まりませんでした。
■ジョジョの奇妙な冒険 第4部 / ダイヤモンドは砕けない
激しい喜びはいらない、それでいて深い絶望もない植物の心のような人生こそわたしの目標だったのに
3部では敵の親玉を倒しにエジプトまで行くという一種のロールプレイングゲームなのだが、4部の舞台は平凡な何処にでもある街が舞台。まさに日常生活その ものなのである、当然ストーリーに迫力を加えるには敵が強大で恐ろしいければそれにこした事はないのだが、4部だけは少し違って日常生活にも「悪」が潜ん でいるということ。だがそれは不透明であまり見えてこない、見えないから怖いという事なのだ。最初から最後の敵をババンと見せるのではなく、街の中に 「悪」が潜んでいると刷り込ませる荒木先生の話の繋げ方が読んでいてハッとさせられた。辻彩のエピソード、仗助と露伴先生のチンチロ勝負など、善と悪のバ トル以外のお遊びの描写も魅力的。地上最悪の悪のディオを倒した前作の主人公でさえも、この街に住むチンピラに危機を感じる辺りが見せ方がうまい。普通 「こんな奴らすぐに倒せるやろ!」と思ってしまう所なんですが、絶妙な駆け引きで読者をそうは思い込ませない、そう荒木先生は読者を操る事が非常にうまい 漫画家なのかもしれない。

自分が特に好きなのは吉良吉影。手フェチの変態殺人鬼であるにも関わらず、目立たずに平穏な人生を目指しているという、4部のラスボス的存在。4部キャラ 全体に言える事ですが、生活臭に満ちていてリアリティーがある。恐怖しながらもどこかで理解や共感もしてしまっている、吉良はその最たるものです。「わた しは常に『心の平穏』を願って生きてる人間ということを説明していいるのだよ…『勝ち負け』にこだわったり、頭をかかえるような『トラブル』とか、夜もね むれないといった『敵』をつくらない……というのがわたしの社会に対する姿勢であり、それが自分の幸福だということを知っている…もっとも、闘ったとして も、わたしは負けんがね。」最後の闘ったとしても、わたしは負けんがね。という最後の言葉が吉良らしくて好き。物語の最後の敵なのに何処か憎めなく、何故 か共感してしまう、だけど「悪」なのだ。闘争は吉良が目指している穏やかな生活とは掛け離れているが、戦わないと平凡な生活が送れない、だから闘う。やは り敵なのに憎めない。
■ジョジョの奇妙な冒険 第5部 / 黄金の風
覚悟とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開くことだッ
溜息が出るくらいカッコイイキャラクターが登場するのが5部、本当に全員カッコイイ、味方もそうだし敵までもカッコイイ。キャラクターの1つ1つの言葉で 鳥肌がたちぱなっし、ジョジョの中でも1番読み応えのあるのが第5部だと僕は思います。5部のスタンドはバトルは複雑なものが多いですが、その能力自体は 誰でも思いつきそうなものだったり、シンプルなものが多いです。物体や実態を小さくするとか、その場に固定するとか、老化させるとか。それだけなのにあそ こまでの頭脳戦を描く辺りがやはり素晴らしい。だが5部の素晴らしさはこれだけではない、もし相手の裏を取った先の結末が「自分の死」があったとしても5 部のキャラクターはその「死」すら乗り越える黄金の覚悟を持っている。自分の銃弾が弾き飛んで戻ってくる覚悟で銃弾を乱射したミスタ、心臓の音を隠す為自 ら心臓を止めたブチャラティ。本当にクールでカッコイイ。

前作のスタンドバトルは一遍して今回は命がけの危ない戦いばかりが続きます。腕がぶっ飛ぶのも、銃弾が身体に減り込むなんて日常茶飯事、ギャングの抗争だ からお互いが「死」を覚悟して戦ってる。こういうバトル漫画では珍しい敵同士の「ボス」同士が戦うシーンがありますが、このバトルがメチャクチャ熱い。ボ スのもう1つの人格ドッピオと、暗殺チーム・リーダーのリゾットの熾烈なバトル。リゾットの未知なる能力であまりにも強い能力に驚き、攻守が次々と入れ替 わっていく戦況に興奮させられ、お互いに謎を解き合いその隙を突き合う、先が読めない高度な戦闘が楽しめます。しかも、ナランチャのエアロスミスを利用し ての実に意外な決着。リゾットの最期の意地と誇りもまた壮絶で心に響いた。敵にも気高き譲れない確かな誇りが垣間見れた素晴らしい部でした。
■ジョジョの奇妙な冒険 第6部 / ストーンオーシャン
人類は一つの終点に到着し夜明けを迎えたのだッ!
ジャンプを立ち読みした時にこの事実を知ってすぐに友達に電話をした覚えがある、「6部の主人公が女性だ!」って。ジョジョのバトルは普通に手首がブチ飛 んだり、顔の皮がペリッと捲れたりする常識では考えられない漫画な筈なのに、あえて女性を使うとは恐れいったとしかいえない。今までのジョジョと比べて感 情移入しやすいキャラクターが出てこないっていうのが評価を下げてしまう。ディオの息子が出てくるのですが、前作の主人公(これもディオの息子)と比べて しまうと、月とスッポンなわけで、本当に魅力的なャラが出てこなかった。最後の終わり方は見せ方はキレイですが、行ってしまえばバットエンドです。だけど 感動します、ここでは書きません、絶対に読んでください!この作品が魅力的だと思える理由は、「どんな苦境でも前向きに乗り越える素晴らしさの美学」が全 編に満ち溢れているからだと思いました。